リクナビを運営するリクルートキャリア(東京・千代田)が学生の同意を得ずに「内定辞退率」の予測を企業に販売していた問題で、26日に小林大三社長が問題発覚後初めて会見し「学生への配慮が欠けていた」などと釈明した。情報管理のずさんさや発覚後の対応への学生の不信感は強い。就活ビジネスを一大産業に育ててきた同社の根幹が揺らいでいる。
小林社長は「わたしたちへの信頼は失墜しており、事業存続そのものに関わるレベルである」と危機感をあらわにした。その上で2020年1月をめどに新卒事業の経営体制を変更すると明言したが、具体的なビジネスモデルは明らかにしなかった。社長自身の辞任も否定した。
同社はリクナビに登録した学生の閲覧履歴を人工知能(AI)で分析し、それぞれの選考や内定を辞退する確率を5段階で予測するサービス「リクナビDMPフォロー」を2018年3月に提供を開始。トヨタ自動車など38社と契約した。
個人情報とひも付いた内定辞退率は企業が学生を選考する上での合否を判断する材料になりうる。これについて小林社長は「これまでの調査では合否判定に使った企業はない」と弁明した。しかし契約企業に対し監査のような詳細な調査は実施していないため、合否判定への利用が「なかったとは言い切れない」とも話し不信感を残した。
会見は政府の個人情報保護委員会が同日、リクルートキャリアに是正を求める勧告を出したことを受けて開かれた。同サービスについて同社は、7月31日に一時休止を決定、8月4日には廃止を決定したが、問題発覚後3週間以上たっても会見は開かなかった。
同委員会は約8千人の利用者のデータを同意を得ずに第三者に提供したことなどが、個人情報保護法違反にあたると判断した。個人情報の取り扱い方法の改善に向け組織の見直しと再発防止策について9月30日までの報告を求めた。
学習院大4年の男子学生は「データが合否の判断に使われた可能性は十分ある。データが実際にどのように扱われていたか具体的に公表すべきだ」と話した。学生が安心して利用できる環境が整わなくては、広告を出稿する企業の「リクナビ離れ」も進む可能性がある。